フィボナッチ・リトレースメント(Fibonacci Retracement)は、株価の上昇や下降時における反転ポイントを予測するためのテクニカル分析手法です。
「フィボナッチ」という名前は、イタリアの数学者レオナルド・フィボナッチから来ており、「リトレースメント」は英語で「後退」や「後戻り」の意味を持ちます。この分析手法は、フィボナッチ数列を基に市場の価格動向の変動点を特定するものです。
本記事では、フィボナッチ・リトレースメントの解釈と効果的な使用方法について、画像付きで分かりやすく詳しく解説しています。
フィボナッチ・リトレースメントとは?
フィボナッチ数列は、イタリアの数学者レオナルド・フィボナッチの名を冠しています。この数列は、自然界において一般的な現象であり、植物の花びらの数、ヒマワリの螺旋、貝殻のらせん模様など、自然界の多くの部分にその法則が見られます。
フィボナッチ数列は、「連続する2つの数字の和が次の数字となる」という特性を持ち、その数列は「1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144…」と続きます。
- 連続する2つの数字の和が次の数字になる。
- 各数字は一つ上の数字で割ると約0.618に、
- その数字に0.382をかけると2つ前の数字となり、
- 3つ前の数字で割ると約0.236になる。
フィボナッチ・リトレースメントは、これらの数値を使って、金融市場での価格変動の可能性を探るテクニカル分析手法です。
この方法は、市場が予測可能な割合で価格が反発あるいは反落した後、元の価格変動の方向に戻ると考えられています。
MT4/MT5でフィボナッチ・リトレースメントを表示する
パソコン用MT4/MT5でフィボナッチ・リトレースメントを表示する手順
MT4/MT5画面左側のツールバーから、「4本線のFアイコン」(MT5はF表示なし)をクリックします。
(メニューバーの「挿入」→「フィボナッチ」→「リトレースメント」をクリックしてもOKです。)
メニューバーの「挿入」→「オブジェクト」→「フィボナッチリトレースメント」をクリックしても同じ操作になります。
- 上昇トレンドの場合
直近の値動きが上昇傾向の場合は、上昇相場期間の間の最安値から最高値にかけてマウスをドラッグ(左クリックを押しながら移動)します。
- 下降トレンドの場合
直近の値動きが下落傾向の場合は、その下落相場の期間の最高値から最安値にかけてマウスをドラッグ(左クリックを押しながら移動)します。
以上でチャートにフィボナッチ・リトレースメントを引くことができます。
スマホ用MT4/MT5アプリでフィボナッチ・リトレースメントを表示する手順
チャート画面上のオブジェクトアイコンをタッチします。
「オブジェクト追加」をタッチします。
オブジェクトリストが表示されるので、フィボナッチ係数項目の「フィボナッチリトレースメント」を選択します。
直近の値動きが上昇傾向の場合は、上昇相場期間の間の最安値(起点)をタッチして最高値(終点)にかけて押し続けてフィボナッチリトレースメントを引きます。
逆に、直近の値動きが下落傾向の場合は、下落相場期間の間の最高値(起点)をタッチして最安値(終点)にかけて押し続けて、フィボナッチリトレースメントを引きます。
フィボナッチ・リトレースメントの設定について
フィボナッチ・リトレースメントは初期設定で使用可能ですが、スタイルや表示期間、追加レベルなどのカスタマイズが必要な場合、プロパティ設定画面を通じて変更を加えることができます。
パソコン用MT4/MT5でフィボナッチの設定画面を表示させる手順
フィボナッチ・リトレースメントの設定画面を開くには、該当するチャート画面で右クリックし、「表示中のライン等(MT5は「オブジェクトリスト」)」を選択します。
フィボナッチ・リトレースメントを表示したチャートの画面上で右クリックして、「オブジェクトリスト」をクリックします。
表示されるリストから「Fibo」を選択してダブルクリックをします。
または、Fiboを選択した後「編集」(MT5は「プロパティ」)ボタンをクリックすると設定画面が表示されます。
スマホ用MT4/MT5アプリでフィボナッチの設定画面を表示させる手順
フィボナッチが表示されたチャートで、フィボナッチの斜めのラインの上で長押し後、「設定」(Androidは「ペンアイコン」)をタッチします。
色やラインのスタイルを変更したい場合
パソコン用MT4/MT5でフィボナッチの色や線の種類を変更したい場合は、フィボナッチ設定画面の「レベル」タブの画面下から変更できます。
色の箇所をクリックすることで自由にお好きな色を指定できます。となりの直線は、点線や線の太さを変更できます。
フィボナッチ・レベルを追加したい場合
フィボナッチ・リトレースメントレベルは、標準で「0.0%、23.6%、38.2%、50%、61.8%、100%、161.8%、261.8%、423.6%」が設定されています。
その他、フィボナッチ係数の76.4%などを追加することも可能です。
フィボナッチ設定画面の「レベル」タブから「追加」ボタンを押し、レベル項目の一番下の空白画面をダブルクリックして、ご希望のフィボナッチ係数を入力します。
以下の画像では、0.764(76.4%)を追加している例です。
フィボナッチのラインを画面の端まで伸ばしたい場合
フィボナッチ・リトレースメントは、各ラインをチャートの右端まで伸ばして表示することもできます。
下記のチャート例は、フィボナッチの各ラインを右に延長した例です。赤枠の部分のラインが延長されます。
右端までラインを伸ばすことで、今後の値動きからの抵抗線や支持線を捉えることができるようになります。
フィボナッチ設定画面の「パラメーター」タブから、「右に延長」にチェックを入れて「OK」ボタンを押します。(左へ延長したい場合は、「左に延長」にチェックを入れます。)
特定の時間足チャートにのみ表示したい場合
他のインディケーター同様に、特定の時間足にのみ表示させることもできます。
フィボナッチ設定画面の「表示選択」タブから、ご希望の時間足にチェックを入れて「OK」ボタンをクリックします。
フィボナッチ・リトレースメントを活用した取引戦略
フィボナッチ比率には、「0%、23.6%、38.2%、50%、61.8%、100%、161.8%、261.8%、423.6%」が標準で設定されており、これらはフィボナッチ理論に基づいた比率です。特に「38.2%、50%、61.8%」の水準が、戻り目標値とされています。
- 38.2%まで価格が戻った場合: トレンドが強い
- 50%または61.8%まで価格が戻った場合: トレンドが弱い
- 61.8%以上まで価格が戻った場合: トレンドの起点まで戻る可能性が高い
上昇トレンドの場合
「38.2%、50%、61.8%」の水準で押し目買いの地点を判断します。
上記のチャート例は、上昇トレンドで引いたフィボナッチリトレースメントです。終点以降の価格推移は、「38.2%、50%、61.8%」の付近でそれぞれ価格が上昇へ戻っていることを表しています。
上昇トレンドでフィボナッチを引いたあとに、「38.2%、50%、61.8%」まで価格が戻った場合、買い注文の検討をします。
上昇トレンドでフィボナッチを引いたあとに、「61.8%」以上まで価格が戻った場合、売り注文や損切りを検討します。
下降トレンドの場合
「38.2%、50%、61.8%」の水準で戻り売りの地点を判断します。
上記のチャート例は、下降トレンドで引いたフィボナッチリトレースメントです。終点以降の価格推移は、「38.2%、50%、61.8%」の付近でそれぞれ価格が下落へ戻っていることを表しています。
下降トレンドでフィボナッチを引いたあとに、「38.2%、50%、61.8%」まで価格が戻った場合、売り注文を検討します。
下降トレンドでフィボナッチを引いたあとに、「61.8%」以上まで価格が戻った場合、買い注文や損切りを検討をします。
MT4/MT5でフィボナッチ・リトレースメントを活用する方法のまとめ
- 押し目や戻り売りを判断するテクニカル分析
- 38.2%、50%、61.8%の水準が戻り目標値
- 38.2%、50%、61.8%からの順張り取引
- 38.2%で価格がとどまっている場合はトレンドが強い
- 50%、または、61.8%まで価格が戻る場合はトレンドが弱い
- 61.8%以上価格が戻った場合はトレンド起点まで価格が戻る可能性がある
フィボナッチ・リトレースメントは、相場のトレンドを判断してからの順張り取引となるので、まずはトレンドラインや移動平均線を表示してトレンドを判断するところから分析します。
また、フィボナッチリトレースメントは、他のインジケーターと組み合わせて総合的に判断することが推奨されます。