FX(外国為替証拠金取引)で損失が続き、利益が出ない場合、「適切な取引量か」「損切りが適切か」「正しい知識で取引しているか」「自分のルールに沿って売買しているか」の4つのポイントを確認することで、損益が改善されることがあります。
FXで利益を上げるためには、まず損をしないように心がけることが重要です。利益を上げることに集中するよりも、損失を抑えることに注力しましょう。
この記事では、FXで稼げない時に見直すべき4つのポイントについて紹介します。
1. 資金管理(適切な取引量を把握する)
FXで特に重要なのが適切な取引量です。
資金に対して大きなロットで取引すると証拠金維持率が低くなり、為替レートが損失方向へ少し動いただけで、すぐにロスカットされてしまいます。
「資金管理」は、FXに限らず投資全般において最も重要な事項です。
FXにおける適切な取引量の計算方法
適切な取引量は以下の手順で計算できます。
まず、1回の損失許容額(リスク比率)を決めます。一般的には資金の1~2%が適切とされています。
資金 | 1回の損切り率(リスク比率) | 1回の損切り額 |
---|---|---|
10万円 | 1% | 1,000円 |
20万円 | 1% | 2,000円 |
50万円 | 1% | 5,000円 |
100万円 | 1% | 10,000円 |
例えば、資金が10万円の場合、損切り額は1,000円~2,000円、資金が100万円の場合は10,000円~20,000円となります。自分が許容できる損失額を基にリスク比率を決めても良いでしょう。
また、もし10万円の投資資金に対して1万円の損失を許容できるなら、リスク比率は10%となります。ただし、リスク比率が10%の場合、10回の取引で全て損失になると投資資金が0円になるため、リスクが高いと判断ができます。
資金に対する1回の取引量が多いと実効レバレッジが高くなり、その分リスクも高くなります。
逆に取引量が少なければ実効レバレッジは低くなり、利益も少なくなってしまいます。リスクを抑えつつ利益を追求するためには、資金と取引量のバランスが重要です。
1トレードあたりの取引量目安は、下記の流れで計算できます。
- 1回の損失許容額
- 取引する通貨ペアのATR(平均変動幅)
- 「ATR」 × 「取引単位」
- 「➀ 1回の損失許容額」 ÷ 「➂ 今日のATR」
- 「➃の数値」 × 「取引単位」
以上の5つの流れに沿って計算していきます。
では、上記の計算式に当てはめて下記の条件で計算してみましょう。
- 投資資金: 100万円
- 1回の損失許容額: 投資金の1%(1万円)
- 取引単位: 1,000通貨
- USDJPYのATR(1日の変動幅): 50銭(0.5)
- 1回の損失許容額: 100万円 × 1% = 1万円
- 取引する通貨ペアのATR(平均変動幅):50銭 = 0.5
- 「ATR」 × 「取引単位」:0.5 × 1,000通貨 = 500
- 「➀ 1回の損失許容額」 ÷ 「➂ 今日のATR」: 1万円 ÷ 500 = 20
- 「➃の数値」 × 「取引単位」:20 × 1,000通貨 = 20,000通貨
この条件では、1トレードあたりの適切な取引量は20,000通貨と判断できます。
例えば、証拠金が100万円でドル円110円の時に20,000通貨を取引する際、実効レバレッジは2.2倍になり、リスクが抑えられる計算です。
ATRとは?
ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)は、変動率(ボラティリティ)を表す指標です。
MT4やMT5の左枠「ナビゲータ」内の「インディケータ」から「ATR」を選び、ATRを調べたい通貨ペアのチャートへドラッグ・アンド・ドロップすることで簡単に一定期間のATRを確認することができます。
取引量が悪い例
- 最大レバレッジ:1000倍
- 資金(証拠金):100,000円
- 取引通貨ペアと為替レート:ドル/円 110.00円
- 取引量:7ロット(700,000通貨)
- 証拠金維持率:129.87%
- ロスカットされるまでのレート:0.121円(12 pips)
極端な例では、資金が10万円でドル円110.00円の時に7ロット(70万通貨)を取引すると、証拠金維持率は129.87%となり、為替レートが0.121円(12 pips)損失方向に動いただけでロスカットになってしまいます。このような取引は非常に高いリスクを伴います。
証拠金維持率が100%に近くなるような取引は、投資金全額を失うリスクが極めて高いため、避けるべきです。一般的には、証拠金維持率2,000%以上を維持することが望ましいとされています。
良い取引量例
適切な取引量は、証拠金維持率が高い方が良いとされています。以下に良い取引量の例を示します。
- 最大レバレッジ:1000倍
- 資金(証拠金):100,000円
- 取引通貨ペアと為替レート:ドル/円 110.00円
- 取引量:0.04ロット(4,000通貨)
- 証拠金維持率:22,727.27%
- ロスカットされるまでのレート:24.978円(2497 pips)
例えば、資金が10万円でドル円110.00円の時に0.04ロット(4,000通貨)を取引すると、証拠金維持率は22,727%となり、ロスカットされるまでのレートも24.978円もあるため、ロスカットされるリスクは非常に低くなります。
2008年のリーマンショック時でも、3ヶ月間で1ドル104.21円から1ドル87.13円の17.08円下落幅だったため、ロスカットまで24.98円という価格幅は、1回の取引で投資金10万円をすべて失うリスクがほぼ無いと言えます。
ロスカットされにくいということは、損失が広がっても損切りして取引を見直し、再度エントリーするチャンスがあることを意味します。
証拠金維持率・ロスカットの計算式
上記の例で説明した「証拠金維持率」と「ロスカットまでの価格」は、以下の計算式で算出できます。
「有効証拠金(資産合計 + 評価損益 – 出金依頼金)」 ÷ 「必要証拠金合計」 × 100 = 「証拠金維持率」
- 「必要証拠金」 × 「ロスカット水準 20%」 = 「ロスカット基準額」
- (「純資産額」 – 「ロスカット基準額」) ÷ 「取引数量」 = 「ロスカットされるレート」
2. 適切な損切り
予想に反して損失が広がりそうなときは、損失がそれ以上拡大しないように損切り(損失確定決済)をすることが重要です。
損切りをせずに損失ポジションを放置してしまうと、さらに大きな損失につながり、投資金全額を失うリスクが高くなります。
どのラインで損切りをするかは、テクニカル分析を用いて為替レートで決めることもありますが、基本的には資金の何%という比率で損切りを設定する方がリスクは低くなり、再エントリーのチャンスも多くなります。
資金10万円に対する損切り比率と再エントリー回数表
以下の表は、資金(証拠金)10万円の際の損切り額と再エントリー回数をまとめたものです。
1トレードあたりの損切り比率が大きいと、残高の減りが早く、再エントリーの回数が少なくなることがわかります。
損切り比率 | 損切り額 | 残高(初回損失時) | 再エントリー回数 |
---|---|---|---|
1% | 1,000円 | 99,000円 | 99回 |
2% | 2,000円 | 98,000円 | 49回 |
5% | 5,000円 | 95,000円 | 19回 |
10% | 10,000円 | 90,000円 | 9回 |
15% | 15,000円 | 85,000円 | 5回 |
20% | 20,000円 | 80,000円 | 4回 |
50% | 50,000円 | 50,000円 | 1回 |
損切り比率を資金(残高)の1%とした場合、10万円の投資金で損切り額は1,000円となり、損切り後の残高は99,000円となります。この場合、残り99回の取引チャンスがあります。
逆に、損切り比率を資金の50%にした場合、損切り額は5万円となり、損切り後の残高は50,000円しかありません。この損切り比率で取引を続けると、再度取引できる機会は1回しかなくなります。
3. 正しい知識で取引する
FXはギャンブルではありません。「売り・買い」の2択から選ぶとはいえ、勘だけで取引すると損失につながりやすいです。
テクニカル分析やファンダメンタルズ分析を活用して為替レートの動きを判断し、「新規注文・損切り・利益確定のライン」を事前に見極めて取引を進めます。
テクニカル分析では、主に下記のインジケーターをチャートに表示して売買を判断します。
各インジケーターが同じタイミングで同じシグナル(売買指標)を出すわけではありません。自分の取引スタイルに合ったインジケーターを選び、正しく使うことが重要です。
一つのチャートに多くのインジケーターを表示させない
一つのチャートに複数のインジケーターを表示し、トレンド相場やレンジ相場でそれぞれ売買判断をすることは重要です。しかし、インジケーターを多く表示しすぎると混乱を招くことがあります。
以下のチャートは、多くのインジケーターを表示しすぎて売買判断が難しくなった例です。
このように、多すぎるインジケーターの表示は、判断を複雑にしてしまう可能性があります。
そこで、限られたインジケーターを適切に複数表示することで、売買判断がつきやすくなります。
以下のチャートは、3種類の移動平均線と2種類のエンベロープのみを表示した例です。上記のチャートよりもスッキリした見た目になり、抵抗線や支持線がどの箇所にあるのかが判断しやすくなります。
インジケーターは、3種類から5種類までの表示にすることで、見やすくなります。また、チャートやインジケーターの色を変更することで、チャート全体をさらに見やすくすることも可能です。
取引前の確認ポイント
漠然と勘だけで取引しないように、取引前に経済指標の発表日時や指標による為替の影響を確認し、各インジケーターを適切に表示して分析し、売買を判断するようにしましょう。
また、新規注文後に経済指標発表が重なり、「経済指標があるのを忘れていた!」とならないように注意しましょう。
4. 自分のルールに沿って売買する
自分で決めたルールに沿って売買することは重要です。人によって性格が異なるように、取引スタイルも各自異なります。取引の仕方によって、自分に合う・合わない(利益を出しやすい、損失になりやすい)があるため、自分のルールを守ることが大切です。
前述の「1.資金管理」や「2.適切な損切り」も、自分で決めたルールを守らずに感情で取引していては意味がありません。
自分の取引ルール(マイルール)例
- 資金管理で決めた取引量と損切りラインを守る
- 経済指標発表前後は取引しない
- 取引する時間を◯時~◯時までと決める
- ポジションを次の日に持ち越さない(その日のうちに手仕舞いする)
- インジケーターの売買指標に基づいて感情を排除し、機械的に取引する
- 勘、憶測や感情だけで売買しない
- 損失が出たときに損を取り返そうと思わない
- お酒を飲みながら取引しない
- 決めたルールは絶対守る
取引を繰り返すうちに、自分にはこのやり方が合う、このやり方は合わないといったことが理解できるようになります。
自分の失敗(損失)要因と成功(利益)要因を分析し、失敗の反省と解決方法をルールに取り入れることで、より損失を回避できるようになります。
FXで稼げない時に見直す4つのポイントのまとめ
- FXで稼げないときは、「適切な取引量を把握する(資金管理)」「適切な損切り」「正しい知識で取引」「自分のルールを守る」の4つを見直す
- 1回の損失許容は、一般的には資金(残高)の1~2%が適切
- 1トレードの取引量を計算するには、「1回の損失許容額 ÷「今日のATR」✕「取引単位」
- ロスカットまでの価格の計算式
- 「必要証拠金」 × 「ロスカット水準 20%」 = 「ロスカット基準額」
- (「純資産額」 – 「ロスカット基準額」) ÷ 「取引数量」 = 「ロスカットされるレート」
- インジケーターは、多く表示しすぎずに3種類から5種類までの表示にした方が分かりやすい
- 取引前には、経済指標の発表がないか確認すること
- 自分なりに取引のルールを作ってマイルールに沿って売買することも大切
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