FXに限らず、株や商品などの売りと買いのタイミングは、「安く買って高く売る」、または「高く売って安く買い戻す」が基本です。
「安い時」「高い時」の判断は、値動きの推移をグラフにした「チャート」にインジケーターという指標を重ねて表示し、売買の判断をします。このチャートで売買判断をすることをテクニカル分析といいます。
この記事では、インジケーターの中でも人気の主要インジケーターを活用する方法を解説しています。
チャートで売買を判断するとは?
FXは、「売り・買い」の2択を予想するだけの売買です。しかし、漠然と運任せで取引するとギャンブルと同じになり、損失のリスクも高くなります。
そこで、チャートを使って売買を判断します。しかし、価格の値動きだけを表したチャートでは、どこで売ってどこで買ってよいのか判断がつきません。
しかし、インジケーターをチャートに表示させることで、売買判断がしやすくなります。
下記のチャートは、移動平均線というインジケーターを表示させた例です。赤丸の箇所で価格が反発や反落しているため、移動平均線に価格が接触したタイミングで売買判断を目安とすることができます。
テクニカル分析による売買判断
チャートにインジケーター(指標)を表示して売買判断を行うことをテクニカル分析といいます。
テクニカル分析には様々な手法があります。この記事では、世界中のトレーダーが主に使っている人気のインジケーター「移動平均線・ボリンジャーバンド・エンベロープ・MACD・RSI」の5種類の概要について紹介します。
移動平均線(Moving Average)
移動平均線とは、一定期間の為替レートの平均値を線(グラフ)にし、相場の方向性などから売買を判断する指標です。
相場の方向性を判断する
移動平均線の角度で相場を判断します。
- 移動平均線が上向き: 上昇相場
- 移動平均線が下向き: 下落相場
下記チャート画像のオレンジ色の線が移動平均線です(色は自由に変更可能)。
緑色の線(ローソク足)は為替レートのグラフで、一番右側が最新の価格を表し、左側は過去の価格を示しています。
上記チャート例では、中央あたりでオレンジ色の移動平均線が上向きになっているのがわかります。これは相場が上昇傾向(上昇相場)にあることを示し、このときに「買い」注文を出すことで利益が出る確率が高くなります。
反対に、移動平均線が下向きの下落相場では、「売り」注文を出すことで利益が出る確率が高くなります。
移動平均線同士の交差で売買を判断する
移動平均線同士の交差は売買のシグナルとして使用されます。
- ゴールデンクロス:買いのサイン
- デッドクロス:売りのサイン
短期の移動平均線が中期の移動平均線を上回るときのことをいいます。
上記チャート例の赤丸の箇所がゴールデンクロスです。水色の線がオレンジ色の線を上回ってクロスしているのがわかります。
短期の移動平均線が中期の移動平均線を下回るときのことをいいます。
青丸の箇所がデッドクロスで、水色の線がオレンジ色の線を下回ってクロスしています。
このように、移動平均線の交差ポイントで売買を判断することができます。
移動平均線の期間例
移動平均線の主な期間設定例は以下の通りです。
- 短期移動平均線: 5、8、13など
- 中期移動平均線: 21、25、75など
- 長期移動平均線: 100、200など
移動平均線の期間の数値には特に決まりはありませんが、上記の組み合わせが一般的に使用されています。
例えば、「5MA」という移動平均線は、過去5本の為替レートの平均値をグラフにしたものです。
日足チャートの場合は5日間の為替レート平均値となり、15分足チャートの場合は5本分なので1時間15分間(15分×5本)の為替レート平均値となります。
より詳しい移動平均線の使い方は、下記の記事で紹介しています。
ボリンジャーバンド(Bollinger Bands)
ボリンジャーバンドとは、移動平均線の上下に同期間の標準偏差を表した線(バンド)です。
価格がバンドの外に位置するときは統計上異常値とされ、いずれバンド内に価格が回帰する動きを元に、ボラティリティの判断や売買の判断に利用します。
逆張り取引による売買の情報が溢れていますが、逆張りよりも順張りで取引する方法が正しい使い方です。
ボリンジャーバンドの計算式
σ=√(期間 × 期間内の終値の2乗の合計 – 期間内の終値の合計の2乗) ÷ (期間 ×(期間-1))
- ±1σライン: 移動平均線の数値±標準偏差
- ±2σライン: 移動平均線の数値±2×標準偏差
- ±3σライン: 移動平均線の数値±3×標準偏差
これらの計算は、自分で手計算することなく、MT4/MT5で自動計算され、チャートにボリンジャーバンドがリアルタイムで表示されます。
レンジ相場における逆張り取引例
ボリンジャーバンドの取引で最も知られている方法は、正規分布の確率に基づき、価格がバンドの外に位置したときに逆張りすることです。
ただし、この逆張り取引は正規分布が前提となるため、レンジ相場のみに有効です。
標準偏差 = σ(シグマ)
- 「-1σ」~「+1σ」の間に値が存在する確率は68.26%
- 「-2σ」~「+2σ」の間に値が存在する確率は95.44%
- 「-3σ」~「+3σ」の間に値が存在する確率は99.73%
つまり、この範囲外は統計学上は異常値に該当するため、何れ価格はバンドの中に収まるという考えのもと、逆張りによる売買の判断になります。
バンドウォークによる取引例
Walking The Bands(バンドウォーク)は、価格がバンドの帯を歩くように見えることから名付けられています。
- 上昇相場では、+1σで買い注文、+2σで決済
- 下降相場では、-1σで売り注文、-2σで決済
上記のチャートでは、価格がボリンジャーバンドの+1σ~+2σの間で値動きしているのが分かります。
このバンドウォークのパターンでは、+1σに価格が到達したときに買い注文をし、+2σに価格が到達した箇所で決済をすることで利益を狙えます。
エンベロープ(Envelope)
エンベロープとは、移動平均線から上下に一定の幅を乖離させた線です。
移動平均線から一定の乖離の範囲内で価格が推移する傾向を利用し、売買を判断する指標です。
レンジ相場における逆張り取引
レンジ相場(ボックス相場)では、価格は移動平均線から一定の乖離内で値動きするため、エンベロープを用いた取引手法が最も活用されます。
エンベロープの上限に価格が到達したときに売り、エンベロープの下限に価格が到達したときに買い注文をする判断が可能です。
- エンベロープ上限に価格が到達したら「売り」
- エンベロープ下限に価格が到達したら「買い」
上記チャート例では、エンベロープ上限に価格が到達した青丸ポイントで売り、エンベロープ下限に価格が到達した赤丸ポイントで買い注文をします。
レンジ相場においては、逆張り取引となります。
トレンド相場における順張り取引
トレンド相場では、エンベロープの中央値である移動平均線からトレンドの方向へ向けて順張り取引ができます。
- 上昇相場: エンベロープ中央値で買い、エンベロープ上限で決済
- 下降相場: エンベロープ中央値で売り、エンベロープ下限で決済
上記の下落相場チャートの取引例では、エンベロープ中央の移動平均線で売り注文をし、エンベロープ下限で決済を繰り返すことで利益を上げることができます。
逆に上昇相場の場合は、エンベロープ中央の移動平均線で買い注文を出し、エンベロープ上限で決済する取引になります。
MACD(マックディー)
MACDとは、2本の移動平均線の乖離具合をグラフで表示し、さらに移動平均線(シグナル)を重ねて相場の売買を判断する指標です。
MACDはオシレーター系のインジケーターであり、チャートの下枠のサブウィンドウに表示されます。
0数値を基準に売買を判断
MACDには「0(ゼロ)」ラインが表示されます。2つの移動平均線が重なる時にMACDのグラフが0ラインに到達します。
- MACDの棒グラフとシグナルが共にマイナスからプラスに転じたときは「買い」注文
- MACDの棒グラフとシグナルが共にプラスからマイナスに転じたときは「売り」注文
上記チャートでは、25EMA(オレンジ色)と75EMA(青色)の2つの移動平均線が交わる赤丸のポイントで、MACDも0(ゼロ)になっているのが分かります。25EMAが75EMAを上回りゴールデンクロスとなり、MACDもマイナスからプラスへ転じています。
このように、0を基準にMACDがプラスに転じるかマイナスに転じるかで売買を判断します。
MACDとシグナルが交差するタイミングで売買を判断
もう一つの売買判断の指標として、MACDとシグナルが交差するタイミングがあります。
- MACDがシグナル線を下から上に交差したときは、ゴールデンクロスとなり「買い」
- MACDがシグナル線を上から下に交差したときは、デッドクロスとなり「売り」
ゴールデンクロス後に0ラインからプラスに転じれば、価格がさらに上昇する確率が高くなります。
逆にデッドクロス後に0ラインからマイナスに転じれば、価格がさらに下落する確率が高くなります。
このように、0基準の売買判断と合わせて、総合的に判断して使用するのが一般的です。
RSI(アールエスアイ)
RSIとは、買われすぎや売られすぎを判断するためのテクニカル指標です。
一定期間(一般的に14)の変動幅の中で、価格がどれくらい上下しているのかを0%から100%までの間で図る指標です。RSIはオシレーター系のインジケーターで、チャートの下枠のサブウィンドウに表示されます。
- 70%以上は、「買われすぎ」
- 30%以下は、「売られすぎ」
上記チャート例では、青丸箇所がRSIで30%以下になっているため、「売られすぎ」と判断し、買い注文をします。
赤丸箇所はRSIが70%以上になっているため、「買われすぎ」と判断し、売り注文をします。
RSIは、価格が一定の範囲内で動くレンジ相場では有効に活用できます。
しかし、どちらか一方に動くトレンド相場では判断が難しくなるのがデメリットです。そのため、他のインジケーターと組み合わせて売買を判断する方法が一般的です。
適切なインジケーターを表示すること
世界中のトレーダーに人気のインジケーター5つを紹介しましたが、取引する通貨ペアや相場の状況によりインジケーターを使い分けることが大切です。
それぞれ、トレンド相場に適したインジケーターとレンジ相場に適したインジケーターがあります。
為替レートは常に同じ値動きをするわけではないため、相場の転換時には異なるインジケーターを使用して売買の判断に利用しましょう。
一つのチャートに多くのインジケーターを表示しすぎると、チャートが見づらくなり、売買判断が難しくなります。そのため、限られたインジケーターのみを表示する方が簡単で見やすくなります。
ちなみに、上記チャート例は、3つの移動平均線(21EMA,75EMA,200EMA)とエンベロープ(14EMA,偏差0.7)、MACDの3種類のインジケーターを表示させています。