エンベロープ(Envelopes)は、移動平均線から一定の割合で上下に乖離ラインを描くテクニカルインジケーターです。エンベロープをチャートへ表示することで、トレンドの方向性や相場のボラティリティを確認するのに役立ちます。
価格がエンベロープの外側に移動すると、相場が過熱または過冷えしている可能性があり、反転のサインとして解釈されることがあります。
エンベロープは、相場のボラティリティが大きいと移動平均線から価格が乖離する幅も大きくなるので、相場の状況や表示しているチャートの時間足に合わせて、設定する偏差値(乖離具合)を調整します。
この記事では、エンベロープの見方や効果的な使用方法について、画像付きで分かりやすく解説しています。
MT4/MT5でエンベロープを表示する
パソコン用MT4/MT5でエンベロープを表示する手順
MT4/MT5画面左側の「ナビゲーター」枠から「インディケータ → トレンド → Envelopes」を選択し、適用させたいチャートにドラッグ・アンド・ドロップ(左クリックを押しながら移動して左クリックを離す操作)します。
エンベロープの設定画面が表示されるので、「期間」「移動平均線の種別」「偏差」の3つをご希望の数値などへ変更します。
以上の簡単な設定でEnvelopesをチャートへ表示できます。
- 期間: 5、7、10、14、25、75、100など
- 移動平均線の種別: Simple(単純移動平均線)や Exponential(指数加重移動平均線)
- 偏差: 価格がエンベロープに接触するように調整
「色の設定」タブから、エンベロープの色を変更することも可能です。
スマホ用MT4/MT5アプリでエンベロープを表示する手順
チャート画面上に表示されている「f」アイコン(インジケーターアイコン)をタッチします。
「メインウィンドウ(メインチャート)」をタッチして、「Envelopes」をタッチします。
ボリンジャーバンドの設定画面が表示されるので、「期間」「スリッページ(偏差)」「メソッド(種別)」の3箇所をご希望のものに変更して「完了(保存)」ボタンをタッチします。
また、「スタイル」項目からご希望の色へ変更ができます。
- 期間: 5、7、10、14、25、75、100など
- 種別(メソッド): Simple(単純移動平均線)や Exponential(指数加重移動平均線)
- 偏差(スリッページ): 価格がエンベロープに接触するように調整
「スタイル」項目から、エンベロープの色を変更することも可能です。
以上のタッチ操作で、MT4 / MT5スマホアプリのチャートにエンベロープの表示が完了です。
MT4/MT5で表示するエンベロープの設定方法
エンベロープの期間
エンベロープの期間とは、エンベロープの中央に配置される移動平均線の期間です。具体的には、エンベロープの中央線が移動平均線に相当します。エンベロープを用いた分析では、普段から使用している移動平均線の期間を選択することが効果的です。
時間足 | 移動平均線の期間設定の目安 |
---|---|
15分足 | 4、8、12、16、20、24、48、64、96など |
1時間足 | 4、8、12、24、36、48、72、96、120など |
4時間足 | 2、4、6、12、24、60、120、240など |
日足 | 5日、10日、20日、22日、25日、50日、75日、100日、200日など |
週足 | 13週、26週、52週など |
月足 | 12ヶ月、24ヶ月、60ヶ月など |
エンベロープの種別
エンベロープは基礎となる移動平均線から上下に一定間隔で設定される線です。
使用する移動平均線の種別も選択が必要で、株式市場や外国為替市場では「単純移動平均線(SMA)」と「指数平滑移動平均線(EMA)」が主に使用されます。
特に為替市場のように価格変動が激しい場合、最近の価格に重きを置く指数加重移動平均線が適しているとされます。
- 単純移動平均線(SMA): MT4での表記は「Simple」
- 指数移動平均線(EMA): MT4での表記は「Exponential」
- 平滑移動平均線(SMMA): MT4での表記は「Smoothed」
- 加重移動平均線(WMA): MT4での表記は「LinearWeighted」
エンベロープの偏差
エンベロープの偏差は、設定した移動平均線からどれだけ乖離させるかを決定する値です。
この偏差値は、価格のボラティリティやチャートの時間足により異なり、市場の状況に応じて都度調整が必要です。価格がエンベロープに接触する点で数値を見極めるのが一つの方法です。
下記の表は、期間14のエンベロープの場合のエンベロープ偏差の参考値です。
時間足 | エンベロープ偏差 参考値(期間14の場合) |
---|---|
5分足 | 0.01 ~ 0.05 |
15分足 | 0.05 ~ 0.15 |
1時間足 | 0.15 ~ 0.40 |
4時間足 | 0.60 ~ 0.80 |
日足 | 1.00 ~ 1.50 |
週足 | 3.00 ~ 3.50 |
エンベロープの偏差の適切な設定方法
エンベロープの偏差は市場のボラティリティに応じて変動するため、一度設定して永続的に利用できるわけではありません。取引を行う前に都度、偏差の設定を見直す必要があります。
価格がエンベロープの上限または下限に触れた時点で偏差を調整する
以下のチャート例は、「USD/JPY、1時間足、期間14、指数平滑移動平均、偏差0.50%」で設定されたエンベロープです。
このエンベロープの上限及び下限ラインは、価格の高値や安値からかなり離れており、売買判断が困難であることが確認できます。
次に示すチャート例は、上記と同じタイミング、同じ条件で偏差を「0.17%」に変更したものです。
上記のエンベロープを表示したチャート例の場合、エンベロープの上限や下限ラインに価格が触れて反発または反落する様子が確認できます。価格がエンベロープのラインに接近する点で偏差を設定することで、より効果的な売買判断が可能になります。
エンベロープのラインに価格が触れる地点で適切に偏差を設定することは、正確な売買判断を行うために重要です。
エンベロープを活用した取引方法
エンベロープを活用した取引方法は、大きく分けて下記2つの取引戦略があります。
- 上限と下限からの逆張りによる取引戦略
- トレンド相場において中央値から上限や下限に向けての順張りによる取引戦略
1. 上限と下限からの逆張りによる取引戦略
トレンドが明確でないレンジ相場などの相場状況では、エンベロープの上限または下限に価格が達する際、逆張りの手法による取引が適用できます。
上記チャート例では、1時間足チャート、期間14、偏差0.25%のエンベロープを表示しています。
エンベロープの上限(青丸で示される部分)に達した時に売り、下限(赤丸で示される部分)に達した時に買いの注文を入れます。ポジションが反対方向に動いた際(緑三角で示される部分)には損切りを行う取引が可能です。
トレンドが明確ではない相場において、価格がエンベロープ下限へ到達したときに、買い注文を検討します。
トレンドが明確ではない相場において、価格がエンベロープ上限へ到達したときに、売り注文を検討します。
価格がエンベロープの中央値(移動平均線)やポジション方向のエンベロープへ到達したときに、利益確定注文を検討します。
ポジション方向とは逆の方向へさらに推移したときは、損切り注文を検討します。
トレンドの存在しない市場において、エンベロープの上限で売り、下限で買いを行い、逆方向に市場が動いた場合には損切りを実施する戦略です。
2. 中央値から上限や下限に向けての順張りによる取引戦略
トレンドが存在する市場で、エンベロープの中央値から上限または下限へ向けての順張り取引が展開可能です。
上記チャート例では、4時間足チャート、期間14、偏差0.50%のエンベロープを表示しています。
下落トレンドの場合、エンベロープの中央値(移動平均線、青丸で示される部分)で売り注文を置き、下限(赤丸で示される部分)で決済を行います。価格がエンベロープの上限(緑三角で示される部分)に到達した場合に損切りをします。
上昇トレンドの相場において、価格がエンベロープ中央値へ到達したときに、順張りで買い注文を検討します。
下降トレンドの相場において、価格がエンベロープ中央値へ到達したときに、順張りで売り注文を検討します。
ポジションと反対方向に価格がエンベロープの限界を超えた場合には損切りを行います。
MT4/MT5でエンベロープを活用する方法のまとめ
- エンベロープは、移動平均線から一定の乖離を表示させた指標
- 偏差の値は、エンベロープのラインへ価格が接近する点でその都度変更
- トレンドが明確ではない相場において、上限や下限からの逆張り取引
- トレンド相場において、中央値から上限や下限に向けての順張り取引
エンベロープは、トレンドが存在する場合もない場合も、順張りや逆張りの取引に適用できます。
ただし、市場のボラティリティに応じて偏差の調整が必要となります。この点を注意し、状況に応じてエンベロープの設定を最適化することが重要です。