MACD(マックディー)(Moving Average Convergence Divergence、移動平均収束拡散法)は、市場のモメンタムを評価し、トレンドの方向性や強さを把握するための重要なテクニカル分析ツールです。
MACDは、短期と中長期の指数平滑移動平均線(EMA)の差を利用して、市場の売買シグナルを提供します。
- MACDライン: 短期EMA(通常は12日)と中長期EMA(通常は26日)の差を表示したラインです。
- シグナルライン: MACDラインの9日指数平滑移動平均線で、MACDラインの平滑化された形を示します。
- ヒストグラム: MACDラインとシグナルラインの差を棒グラフで表示します。この値が正で増加している時は強気のサイン、負で増加している時は弱気のサインです。
この記事では、MACDの読み方と活用方法を画像付きで分かりやすく解説しています。
MT4/MT5でMACDを表示する
パソコン用MT4/MT5でMACDを表示する手順
MT4 / MT5画面左側の「ナビゲーター」枠から「インディケータ → オシレーター → MACD」を選択し、適用させたいチャートにドラッグ・アンド・ドロップ(左クリックを押しながら移動して左クリックを離す操作)します。
MACD(マックディー)の設定画面が表示されます。MACDは初期設定のまま利用することができるので、そのまま「OK」ボタンをクリックして表示させます。
スマホ用MT4/MT5アプリでMACDを表示する手順
チャート画面上に表示されている「f」アイコン(インジケーターアイコン)をタッチします。
「メインウィンドウ(メインチャート)」をタッチして、「MACD」をタッチします。
MACDの設定画面が表示されます。特定の目的がない場合はそのまま使用できるので、「完了(保存)」ボタンをタッチします。
MACDの設定値について
MACD(Moving Average Convergence Divergence)の標準設定は、投資家が市場のトレンドやモメンタムを分析する際に広く用いられる一般的なパラメータの値です。
そのため、通常であれば、このままの標準設定の数値で利用することが推奨されます。
- 短期EMA: 12本(12日間の指数加重移動平均)
- 長期EMA: 26本(26日間の指数加重移動平均)
- シグナル: 9本(MACDラインの9日間の単純移動平均)
MACDのパラメータ値は、通常はそのまま標準設定の値で利用しますが、投資家のトレーディングスタイルや市場の特性に合わせて調整も可能です。
例えば、より速い市場の反応を捉えたい場合は短期EMAやシグナルの数値を小さくすることで、より早くシグナルが出るようになります。ただし、それに伴い誤信号(だまし)のリスクも増加するデメリットがあります。
MACDの見方
上記チャート例のサブウィンドウに表示されているのが、MACDです。MT4/MT5の取引プラットフォームの標準MACDインジケーターでは、「MACDライン」と「シグナルライン」の2つの要素で構成されています。
上記チャート例の赤丸で示した箇所は、2つの移動平均線が交差するラインでMACDでは「0」の地点です。0水準よりMACDが上になると上昇相場と判断し、0水準よりMACDが下になると下降相場と判断するのが一般的です。
- MACD: 短期(12)EMA - 長期(26)EMA(上記チャート例では、赤い棒グラフがMACDです。)
- シグナルライン: MACDラインの移動平均線(9SMA)(上記チャート例では、青い点線のグラフがシグナルラインです。)
- ヒストグラム: MACDライン - シグナルライン(*MT4やMT5では表示されない)
- EMA: 指数加重移動平均線
- SMA: 単純移動平均線
MACDを使う理由
MACDを活用する主な理由は、「移動平均線の持つ反応の遅れ」という弱点を補うことができるためです。
チャートに表示した移動平均線は、市場の平均価格を滑らかにすることでトレンドを表示しますが、実際の価格変動に反応するまでに時間がかかってしまいます。
例えば、下記チャート例のように、市場が急激に方向を変えた場合、移動平均線はそのトレンドの転換を示すのに時間がかかり、投資家にとって適切な売買時期の機会損失を引き起こす可能性があります。
そこで、1979年にジェラルド・アペルによって考案されたMACDは、この問題を解決するために開発されました。MACDは、12日のEMAと26日のEMAの差を計算することで、市場の動きにより迅速に反応するシグナルを生成します。
上記チャート例では、MACDの買いシグナルと合わせて価格も上昇し、MACDの売りシグナル発生後に価格は上昇トレンドから横ばいになりました。
移動平均線単体では、上昇トレンドを目視で確認したときには価格も上昇した後ですが、MACDを表示することで上昇トレンドを価格上昇と合わせて素早く確認することができます。
MACDを活用した取引戦略
MACD(Moving Average Convergence Divergence)を用いた取引戦略は、市場のトレンドや潜在的な転換点を捉えることで効率的な売買タイミングを提供します。ここでは、MACDを活用した具体的な取引例とその使い方を詳しく解説します。
- ゼロを基準に相場のトレンドを判断
- MACDとシグナルラインの交差
- ダイバージェンスによるトレンド転換
1. ゼロを基準に相場のトレンドを判断
MACDラインがゼロライン(基準線)を上回るか下回るかで、市場の一般的なトレンド方向を判断します。
MACDラインがゼロラインを上回っている場合、市場は上昇トレンドにあると考えられ、買い注文を検討します。
MACDラインがゼロラインを下回っている場合、市場は下降トレンドにあると考えられ、売り注文を検討します。
MACDとシグナルラインが交差
MACDライン(短期EMAと長期EMAの差)がシグナルライン(MACDラインの9日間のEMA)と交差するタイミングで売買の判断をします。
MACDラインがシグナルラインを下から上へ突き抜けたゴールデンクロスになった場合、上昇トレンドが始まることを示唆しているため、買い注文を検討します。
MACDラインがシグナルラインを上から下へ突き抜けたデッドクロスなった場合、下降トレンドが始まることを示唆しているため、売り注文を検討します。
ダイバージェンスによるトレンド転換
ダイバージェンスは、価格の動きとMACDの動きが異なる方向を示す時に発生します。ダイバージェンスは、市場のトレンド転換を示唆します。
価格が新しい安値をつける一方で、MACDはより高い安値をつける場合、これは下降トレンドの弱まりを示しており、上昇トレンドへの転換の兆候と見なすことができます。
価格が新しい高値をつける一方で、MACDはより低い高値をつける場合、これは上昇トレンドの弱まりを示しており、下降トレンドへの転換の兆候と見なすことができます。
MACDの欠点と欠点を補うには
MACDは強力なテクニカル分析ツールである一方で、特定の市場状況においてはその欠点も明確に現れます。主な欠点とそれを補う方法を以下に紹介します。
MACDの欠点
- 価格変動が少ない横ばい市場での「だまし」:
- 横ばい相場では、MACDラインとシグナルラインの交差が頻繁に起こり、これが実際のトレンド変化を示していない場合が多いです。その結果、実際には有効ではないトレーディングシグナルが生成され、誤った取引を引き起こすことがあります。
- 緩やかなトレンドではシグナルの精度が低下:
- トレンドが弱いまたは緩やかな場合、MACDが提供するシグナルの遅延や精度の低下が生じることがあります。これは、MACDが本来、より明確なトレンド変化を捉えるために設計されているためです。
MACDの欠点を補う方法
MACDは、明確に価格が動いていない相場では欠点が出てしまいます。しかし、追加で「ストキャスティクス」というインジケータを利用することでMACDの欠点を補うことができます。
ストキャスティクスは、横ばい(レンジ、ボックス)相場が得意なインジケータです。ストキャスティクスは、%K、%Dというシグナルがチャートの下枠に表示され、「0~30%で売られすぎ」「70~100%で買われすぎ」という判断をすることができます。
MACDとストキャスティクスを合わせた売買例
上記チャート例は、サブウィンドウにMACD(中央)とストキャスティクス(下)を表示したチャートです。
「売り」のポイントでは、MACDもストキャスティクスも売りシグナルが発生していますが、その他の四角のポイントでは、ストキャスティクスの売買シグナルはないため、売買は見送りという判断ができます。
MT4/MT5でMACDを活用する方法のまとめ
- 基本設定のまま使うことが推奨される
- 3つのシグナルを活用
- 1. MACDとシグナルラインが交差: 2つの線が交差すると売買シグナルの発生
- 2. ゼロを基準: ゼロを基準にMACDが上回ると上昇トレンド、下回ると下降トレンド
- 3. ダイバージェンスを捉える: MACDが価格と異なる方向へ動くときは、トレンドの転換の可能性
- MACDは、緩やかな相場では精度が弱くなるので、ストキャスティクス等のオシレーター系指標と合わせて使用する